草稿
創作の作業場。ネタや草稿を書き散らすところ。
一話 涼風
御簾越しに、中天を過ぎた太陽の光が差し込んでいる。
日は柔らかく、眠気を誘うようにやさしい色を帯びていた。目を凝らせば、塵が空中を舞う様子まで見てとれる。
涼風は手にした扇をぱちりぱちりと開いては閉じを繰り返し、そのとろけるような日差しの中をたゆたうように目を閉じた。このような春の日は、微睡みに身を任せて、何も煩うことのない幼き日の夢の中へと逃げ込んでしまいたい。思いつきは幾度目のことか、叶えられる日は、いまだかつて訪れたことがなかった。
結局、己は不器用極まりないのだと思う。
たとえ一時の眠りに浸ろうとも、思うような夢の世界へ招かれたことなどついぞなかった。
愁眉を寄せて、その大きな黒い眼を押し開く。扇をついに閉じたままにして、凭れていた脇息から身を起こした。女官の摺り足が鼓膜に届く。
「失礼いたします」
「……糸遊か」
日は柔らかく、眠気を誘うようにやさしい色を帯びていた。目を凝らせば、塵が空中を舞う様子まで見てとれる。
涼風は手にした扇をぱちりぱちりと開いては閉じを繰り返し、そのとろけるような日差しの中をたゆたうように目を閉じた。このような春の日は、微睡みに身を任せて、何も煩うことのない幼き日の夢の中へと逃げ込んでしまいたい。思いつきは幾度目のことか、叶えられる日は、いまだかつて訪れたことがなかった。
結局、己は不器用極まりないのだと思う。
たとえ一時の眠りに浸ろうとも、思うような夢の世界へ招かれたことなどついぞなかった。
愁眉を寄せて、その大きな黒い眼を押し開く。扇をついに閉じたままにして、凭れていた脇息から身を起こした。女官の摺り足が鼓膜に届く。
「失礼いたします」
「……糸遊か」
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